1.09.2010

Across the Universe

アクロス・ザ・ユニバース Across the Universe
Director: Julie Taymor (2007)

劇場公開時には見逃したのだが、「ビートルズの楽曲を33曲」というのが気になっていて、一度は観ておきたかった作品。レビューは賛否分かれていたが、サントラもそこそこ話題になっていたし、アカデミー賞では衣装賞でノミネートされていた。
ジュリー・テイモア監督はFrida(2002)等を撮っているが、ブロードウェイ ミュージカル 「ライオンキング」の演出家としての方が知名度は高い。



結論から言えば、嫌いじゃないけどダメ映画。期待度50%位で観たのだけど、やっぱり消化不良を起こしていて、ミュージカル作品としても、一本の映画としても決定的に何かが欠如していた。製作会社が勝手にカットした短縮版を公開しようとして監督ともめたらしいが、映画会社側の気持ちが分かるような気がする。もっとシンプルにまとめていたら、愛すべき小品になっていたかもしれない。カメラは綺麗だし意欲も感じられるんだけど、映像は凝っている割に斬新さは少ない。今さら山海塾もどきなんて、オマージュにもならないし。

"I Am the Walrus"や"Being for the Benefit of Mr. Kite!"のシーンはまるごと無くても良い程だが、よりもよってボノがカメオ出演してるし、監督の思い入れがプンプン匂ってきそうな場面。観客の欲求を満たすよりも、監督の自己満足が鼻につくかんじなので余計に困る。

この「空振り」感はその昔にジュリアン・テンプル監督のビギナーズ Absolute Beginners (1986) を観た時に似ている。まぁそのダメっぷりが憎めなくもあるのだけれども。製作費$45MのうちSony/マイケルジャクソンに支払ったビートルズ楽曲使用料は$10Mだったとか。これに対して全世界での興行収入が$29Mと、ビジネスとしては失敗作。


一方で、近年のジュークボックス・ミュージカルの先駆となったABBAの楽曲をベースにしたMamma Mia!。数日前に映画版(2008)をケーブルでやっていて、つい再び観てしまった(大きな声では言えないが、映画は劇場で観てるし、ミュージカルも観てる)。

ブロードウェイ・ミュージカル版の演出家が映画版の監督もしているのだが、今どきこんなので良いのかと思うほどチープで雑な作りの娯楽映画なんだけど、あれはあれでターゲットにしている客層(ゲイも含む)の欲求を満たしているような感じがするし、メリル・ストリープも楽しそうなので、許してしまいたくなる。ちなみにDancing Queenのシーンでピアノを弾いているのはABBAのオリジナル・メンバーで、本来「カメオ出演」なんてあれ位の隠し味の方がトリビア的でいいのだ(もう一人はエンドクレジット出てるんだっけ?)。

そして、Mamma Mia!は製作費$52Mに対して興行収入がWorldwideでなんと$603M。プロデューサーのトムハンクス夫妻も大喜びだろう。わざわざ調べてみて驚いたのだが、この2作品にこれほどの差があるとは!!(数字はIMDb)。


話をAcross the Universeに戻すと、テイモア監督は現在、ブロードウェイ ミュージカル版「スパイダーマン Spider Man, Turn Off the Dark」の準備中。製作費は$50M!、ボノとエッジが全曲音楽を担当とか、Mary Jane役にはAcross the Universeでもヒロインを演じたEvan Rachel Wood(22)<あのMarilyn Manson(41) と婚約したばかり・・・とか。資金難でプロダクションは一時中断してプロデューサーが交代、1月だか2月のpreviewには絶対に間に合わないと報じられていたりと、大丈夫なのかなぁぁぁという要素が詰まってますが、成功して欲しいものです。