4.18.2013

ところで、僕はその色に染まっている一人なのかな?




オンラインサイトで送料大幅割引をやってた時に注文した新刊が、発売後の週明けにはさっそくDHLで地球の裏側まで届きました。

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3年振りの新作というよりも、版元が文藝春秋になったことで(過度の)期待をしてしまったようです。 前作よりは好き、というのは褒め言葉ですが、僕の中では  「1Q84」 はかなり低いところにあります。既読感とか、練り直しとか、またもや発売されたストーンズのベスト盤を通して聴いてるような、だったら昔の「Let It Bleed」を聴く方がいいんだけど、みたいなのが、最初の読後感でした。  

「7日で100万部」というと、ブンガクというよりもエンタメですね。僕の方も昔みたいに暗い部屋に閉じこもって読み耽るのと、息子が帰りを待つ通勤バスの中で読むのとでは、喪失感についての受け止め方が異なるのかもしれないです。

還暦を過ぎても青二才の孤独を描くのは、爺になってもsatisfaction を演るストーンズに似ているのかもしれません(もう大金持ちなのに)。あれもエンタメ」に徹していて、こちらもファンだからツアーするならライブには行きたくなりますし会場ではsatisfaction で盛り上がります、な感じです。否定はしないです。新刊が出たのなら読みます。


今回の書き下ろしで「中途半端」と amazon などで批評されている、中途半端に散ったエピソードの数々は、もしその気にさえなれば続編で辻褄あわせが出来るのだろうと思います(必要とは思わないけれど)。 裏側の世界への扉が開くとか、時空をこえてカーネルサンダースやカエルに導かれるとか、なんとか。 「アフターダーク」以来の匠な三人称の完成された文章で一気に読み進むことができそうです。 リストのピアノ曲にあやかるならタイトルは 「多崎つくると灰色の雲」 なんて色彩絡みでどうだろうかと、茶化してみたくもなります。


「1Q84」の大ブームを経ての新しい読者(日本でも、世界でも)に向けてのムラカミハルキとして、この書き下ろしが以前の作品の焼き直しでも、セルフカバーのようでも構わないと思います。たとえば、それがストーンズの新譜みたいなものでも、ベスト盤みたいなものでも。
僕だってオルタモントの悲劇もリアルタイムでは見てないし、リアルタムで聴いたのは Emotional Rescue からで、初めて生で見たのは1990年の東京ドームでした。そうやってストーンズを聴いてきました。

否定もしてないし、(エンタメとして)楽しんでます。でもどこかの奥底では、これまでの世界観が見事に裏切られるような快作がいつか届けられる、そんな淡い期待を抱き続けているのでしょう。これまでの経緯から、それは拭えないのです。


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