扉をたたく人 The Visitor (2007)
Director: Thomas McCarthy
Richard Jenkinsが今年のアカデミー賞主演男優賞にノミネート。
中身は予告篇に凝縮されており(まるでダイジェスト版)、予告篇を観てしまうと本編を見なくてもいいような気がする。
労働ビザの問題を抱えて残念ながら帰国してしまった友人がいたり、自分自身も数多くの手続きを経てきた移民の一人として言わせてもらえれば、終盤に主人公が激高するシーンは映画としては”絵”になるのだが、ほとんど身勝手な逆恨みであって、無意味だ。お陰で不当に収容されたり強制送還されたりしてるような誤解を生じかねない作りになっているのだが、それが監督が意図のようにも思えて疑問を感じる。同時多発テロで取締りが厳しくなったとしても、別に昨日今日の問題ではない。全編リアリティに溢れている描写なのに、なにか残る違和感。
似たような題材の映画にGreen Card (1990) があるけれど、こちらはゆるゆるのメロドラマに徹していた分だけ好感が持てるし、それでも離れなければならない二人(ジェラール・ドパルデューとアンディ・マクダウェル)の不条理さと切なさに同情したものだ。現実離れした展開ながらも本質は間違っていない気がした。
どちらも移民局に引き裂かれる人間関係だが、こうも異なる味付けになるのだと、対比して観るのも面白いかもしれない。