エンディングノート
監督 砂田麻美 (2011)
出演 砂田知昭
www.ending-note.com
「父の終活」のドキュメンタリー。死の記録ではなく、最期の生の記録となっているのが良い。
素直に泣けて、笑えて、家族や人生について考えることができる作品に仕上がっている。師である是枝監督をプロデューサーに巻き込んで、シカゴを含めて海外の映画祭でも上映された(色々と慌ただしくて、今年のシカゴ国際映画祭で観ることができたのは、この1本だけだった)。
実際に人間が死に向かう様子を撮っているのだから、必然的に涙を誘う場面がある。カメラ(娘)は傍観者としての距離感をキープしながらも、余命が限られた父親だけでなく、彼を取り巻く家族:妻、息子や娘たち、母親、そして孫たちの気持ちの揺れをきめ細かく紡いでいる。それが観る者の琴線に触れて号泣することになるかもしれない。
一方で、作品から一歩離れて感じるのは、こんな「素材」(ネタ)を提供すること、これこそが父から映画を目指す娘への最高の贈り物だったのかな、ということ。「気合を入れて孫と遊ぶ」「妻に(初めて)愛していると言う」等と同じように、その段取りの一項目として「娘に撮らせた」のだろうか。それを砂田監督が、撮りためていた膨大な家族フィルムとの編集作業と自身によるナレーションによって、一本の映画として完成させたことで、父娘の最期のキャッチボールが成立している。
それは父から娘への「生きる術」の啓示であり、監督自身の今後の足取りによってこそ、「エンディングノート」という映画の、そして故砂田知昭氏の「段取り」の功績が明らかになるのではないか。誰もが感じる通り、次回作では砂田監督の力量がより問われるだろうし、亡くなったお父さんもそれを楽しみにしている事と思う。終わりは始まり。
なかなか面白い、糸井X是枝 対談
http://www.1101.com/ending-note/2011-10-14.html